賃貸物件のトイレに不具合が生じ、管理会社や大家さんに交換を相談したものの、「まだ使える範囲なので修理で対応します」と言われてしまった経験はありませんか。入居者としては新しいものに交換してほしいのに、貸主側は修理で済ませたい。こうした平行線は、何をもって「経年劣化」と判断するかの基準が曖昧なために起こります。しかし、実はトイレにも交換を検討すべき客観的な「寿命」の目安が存在するのです。 税法上、建物設備の減価償却を計算する際の「法定耐用年数」というものがあり、便器は十五年と定められています。もちろん、これはあくまで会計上の数字であり、十五年経ったら即座に使えなくなるという意味ではありません。しかし、この数字は、トイレという設備が永続的に使えるものではなく、一定期間で価値が減少していくものであるという公的な目安を示しており、大家さんとの交渉における一つの材料となり得ます。 より現実的な寿命として、メーカー側が想定している製品の耐用年数も参考になります。便器本体の陶器部分は非常に丈夫で、ひび割れでもない限り数十年は持ちます。しかし、問題はタンクの内部にあるボールタップやフロートバルブといった部品や、温水洗浄便座の電子部品です。これらの部品の多くは、約十年を過ぎたあたりから摩耗や劣化による不具合が出始めると言われています。実際、メーカーによる部品の供給も、その製品の製造終了後十年程度で打ち切られることがほとんどです。 もし、お住まいのトイレが設置から十年以上経過しており、修理をしようにも「メーカーに交換部品がない」という状況になった場合、それはもはや単なる故障ではなく、製品としての寿命を迎えた「経年劣化」であると強く主張できます。不具合を相談する際は、ただ不便さを訴えるだけでなく、「設置から何年経っているか」「修理部品の供給はあるのか」といった客観的な事実を添えることで、交渉をスムーズに進めることができるでしょう。
賃貸トイレの寿命は何年?経年劣化と判断される目安